錆びたナイフ

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2025年7月6日
[映画]

「MEMORIA メモリア」 2021 A・ウィーラセタクン


「MEMORIA メモリア」



スペイン語と英語が混在.
近代的な建物とジャングル・・いったいどこの国の話かと思う.
南米コロンビア.

主人公ジェシカ(ティルダ・スウィントン)は、地の底から聞こえるようなドスンという音で目覚める.
この「音」どうやら自分にしか聞こえないらしい.
ジェシカはランの栽培を生業にしているが、その生活と彼女をめぐる人々は不得要領・説明不足で、よくわからない.
彼女は、村の川沿いで、魚をさばいでいる男エルナン(エルキン・ディアス)と出会う.
この男が、「音」に関係しているらしい.
夢は見ないというエルナンに、ジェシカはここで眠ってみてという.
その場に横になって眠る男.
その体はピクリとも動かず(周囲の草は動いている)、その映像が延々と続く.
この役者、呼吸してないよなぁ、大丈夫か?
これは「特撮」?
こんな作り方をしたら、映画のストーリーは解体してしまう.

映像の各シーンが、常識の数倍長い.
どうにも居心地が悪く、観ている者はモジモジする.
しかし、川の流れと同じと思って、身をまかせることにする.

ジェシカが都会の交差点を歩いている.
バン!という音がして男が倒れる、がしばらくして起きあがり、周囲を気にしながら走り去る.
車のバックファイア音を銃声と勘違いしたらしいのだが、何の意味があるのだろう.
入院している妹を見舞った時、妹は犬の夢を見たと話すのだが、退院したあと、妹は犬の夢など知らないという.
不得要領・説明不足.
しかし、ミステリーでも不条理劇でもない.

この主人公、どこかで見たような・・T.スウィントン?
ああ、ジャームッシュ「 デッド・ドント・ダイ」の葬儀屋だ.
だからやっぱりこの女は、宇宙人なのだ.
終盤、なんの脈絡もなく、ジャングルから宇宙船らしきものが飛び立つシーン.
J.ジャンクーの「 長江哀歌」と同じだ.
いや、鈴木清順の「ツィゴイネルワイゼン」(1980)だ.
生と死のあわいをさまよっている.

この映画は、セリフより環境音に満ちている.
街の騒音、川の音、スコール、蛙の声.
淡々とあるがまま、とでもいうように.
私は、ル・クレジオ「 悪魔祓い」の、ひき蛙の声を思い出した.
映画の最後は、ジャングルに響く遠雷.

だれの心にも、音が響いている.
声でも言葉でもない、心臓の鼓動?いや、耳鳴り?まさか.
存在の音.
ただ、そこにある、というおと.

この映画、面白いかというと面白くない.
印象的かというと、そうでもない.
もう一度見たいかというと、見たくない(見たけど).
しかし、この映画が好きだという人とは、友達になれると思う.



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