2021年3月6日
[本]

岩手に住む若い歌人のエッセイ.
高校生、大学生、社会人時代の、家族や友達や歌人の仲間の話で、
私のような老人からみれば、まぶしいばかりの、他愛ないできごとである.
授業中に教室のカーテンがゆれて、「風の肉体」と手帳にメモする.
高校三年生、著者は文芸部で、俳句と短歌と詩と小説と随筆と児童文学を書いていた.
と、その日が自分の大学受験の当日であったと気づく、あ、、まにあわない、、、
こういう、スッと気を失うような、その場の描写はなかなかのもの.
女ともだちの恋愛エピソードは多い.
ああしんどいしんどい.
けれどみんな、どちらかといえば、深刻ぶらずにけなげに乗り越える.
著者が出会う人々がみんなユニークで魅力的、というより、著者の観察眼がそういうシーンを生み出している.
地雷を踏まないようにしている、ようにもみえる.
世界には男と女しかいない、のではなく、愛情で性が変わる種族がいればいいのに、と思う.
著者の耳は、フェネックキツネのように、立っている.
ことばに対する感性がフレッシュで、よく周囲をみている.
感情が尖っているわけではない、聞き耳をたてているのである.
すると、友人や知人や赤の他人の発する言葉が、一瞬一瞬、跳ねる.
著者は、そうやってその瞬間を生きている.
そうやって思春期を切り抜けた.
言葉に対するぬきさしならない関係は、ここにはまだみえない.
この著者の歌集を読んでみたいのだが、絶版のようだ.