錆びたナイフ

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2018年12月26日
[映画]

「エイリアン:コヴェナント」 2017 リドリー・スコット


「エイリアン:コヴェナント」


最初に「エイリアン」(1979)を観た時の衝撃を忘れない.
こんなおぞましい映画は二度と見たくないと思った
しかし何度も観るうちに、フェイスハガーもチェストバスターにも慣れてしまった.
作品としてはスターウォーズと同じく、一作目が抜群に印象的で、映画的に面白いのはキャメロンが作った二作目の「エイリアン2」(1986)だ.

「コヴェナント」は「プロメテウス」(2012)の続編だそうで、スコットは、宇宙一凶暴なこの生物を誰が作ったのかというテーマにこだわっている.
無類のおぞましさ・いまわしさは健在で、今は、映画ばかりではないゲームの世界でも、奇怪なクリーチャーたちがあふれている.
かれらはどこから来たのか.
リドリー・スコットとギーガーが呼び覚ました、現代人の意識下の怪物は、自分の体内に別の生物が巣食うという、アイデンティティの不安、「妊娠」への嫌悪と畏怖である.
さらに、かつて人間が滅ぼした、人間を食らう野獣への渇望.
もしこの世界にエイリアンが存在したら、つまり人間が地球上の最高捕食者(トッププレデター)でなかったら、人間の歴史は千年ほど逆戻りし、真の「神話」が復活するだろう.
自然の生態系の中では、羊の群れに、狼が必要なのである.
狼を知らぬ現代の羊たちは、得体の知れない不安にかられている.
この映画は、その羊たちの、あくがれとあがきである.

他の作品と同じく、アンドロイドが話の展開のジョーカーになっている.
この作品では、アンドロイドであるデイビッドがエイリアンの創造主だという.
しかし、寄生宿主にも餌にもならないアンドロイドなど、エイリアンは興味がないだろう.
かつてユダヤの神が、自ら創造した人間たちから疎まれたように、デイビッドが彼を作った人間の父を蔑んだように、デイビッドは、やがて自分が創り出した息子たちから疎外されるだろう.
宇宙の片隅で、辛抱強く人間を待ち続けるエイリアンの執念と、襲われる人間たちの恐怖に、デイビッドは嫉妬しているのだ.
私なら、そう考える.
エイリアンは、バカのひとつ覚えで、人間を見れば襲ってくるが、いったいどうやって生きているのか.
かれらの目的は何か.
全6作を観ても、よくわからないのだ.
それで、私が考えたストーリー

「エイリアン7」

宇宙移民船からの救助信号の内容は、一向に要領を得なかった.
大きな事故が起こって死傷者が出ているらしい.
私は30名の救援チームを編成して救助に向かった.

移民船は巨大な輸送船で移民団員500名を乗せている.
ただし航行クルー10名以外は植民地まで冷凍睡眠状態にある.
遭遇した移民船の内部は荒廃していたが、環境維持装置は機能しており、予定軌道も外れていない.
しかし船内にいたのは、3人の子供とジョーンズ技師だけだった.
冷凍睡眠中の移民団には子供も含まれているが、航行中に子供を覚醒させることはあり得ない.
ジョーンズが我々救助隊に最初に言った言葉は、
「なぜ来た!」
一体この船で何が起こったのか.

Bデッキの冷凍カプセルのモニターを見て私は驚愕した.
500あるユニットの1割近くにDEADアラートが点灯している.
そればかりではない、50ほどのカプセルが「オープン」になっている.
「何だこれは、この乗員たちはどこへ行った」
私がBデッキへ向かおうとするとジョーンズが言った.
「あそこへは行くな、ヤツらがいる」

ジョーンズがポツリポツリと語り出した.
ヤツらは、人間にしか寄生しない
生きた人間を巣に運んで、腹の中に卵を植えつける
卵から孵った幼生は、人間の体の内部を食べて成長する
成獣になるまで1ヶ月だ
その間、人間は仮死状態のまま生き続ける
死んだら腐って餌にならないからだ

俺が生き残ったのは、俺が冷凍カプセルの技師だからだ
最初ヤツらはカプセルを破壊したが
冷凍中の人間は使い物にならないと気づいたのだ
俺はエサ係で・・死刑執行人だ
ヤツらの様子をモニターで見ながら、カプセルを一つづつ開けてやる
冷凍睡眠から目覚めた人間は、目の前に黒い神がいるのに気づくだろう
寝ぼけて気づかない人間もいるかもしれない
その時は悲鳴も聞こえない

5ヶ月前だ
クルーの一人が、Bデッキの奥に繭のようなものがあると報告してきた
その男はそのまま行方不明になった
我々が見つけた繭の中は空だった
それから、ヤツが現れた
俺たちは大量の火器で駆除しようとしたが、皆やられた
俺のほかは、ヤツの餌になったんだ
開けたカプセルの数を見ろ、ヤツらは今10匹以上いるんだ
なぜ子供がいるのか?
子供のカプセルも開けたのだ
ヤツらは、子供は襲わない
それどころか子供を救ってくれるヤツさえいる
人間だって傷ついた子羊は助けるだろう
大人になるのを待っているのさ

救助船でここから脱出するって?
君らの船は無事だと思っているのか
この船にドッキングした時点で、救助船はヤツらの領土になったのだ
そのまま基地に戻れば、ヤツらの思うツボだ
今さらエアロックを閉じてもムダだ
ヤツらは宇宙空間でも数時間生きていられる
どこからでも船内に侵入できる

船はすでに強力なウィルスに感染しているのと同じだ
俺は、救助信号を出すべきではないと判断した
信号を発信したのは・・・ヤツらだ
ヤツらは人間を殺すだけじゃない
君らは、その信号で、おびき寄せられたのだ

一人死んで一匹生まれる
ヤツらは人間なしでは生きられない
宿主の数以上に増えることはできない
植民星に到着して我々が子供を産めば、ヤツらも増殖できる
目的も目的地も我々と一緒なのだ


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