錆びたナイフ

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2016年8月3日
[映画のセリフ]

「人間は何のために生きているのか」

山田洋次 「男はつらいよ 寅次郎物語」


「男はつらいよ 寅次郎物語」


柴又の駅前で、甥の満男が寅さんに尋ねる.
「おじさん、人間てさぁ・・人間は、何のために生きてんのかなぁ」
・・寅の答え.
「なんて言うかなぁ、ほら、ああ、生まれてきてよかったな、て思うことが何遍かあるじゃない、そのために人間、生きてんじゃないのか?」
「ふぅーん」

こういう質問をぬけぬけと発する青年(高校生)と、はぐらかすわけではない、まっとうに答えるこのおっさんに、私は嫉妬のようなものを感じる.
脚本を書いた山田洋次と朝間義隆のすごさなのだが、考えぬいてこの答えを出したというより、彼らの中の寅さんから、ふいと出てきたセリフなのだろう.

生命の存在に目的などない、というのが私の貧しい知識だが、
寅の答は絶妙で、これ以上の名言に出会ったことがない.

満男は、他の人にはこういう質問をしないだろうが、
(以下、私の想像)
母親のさくら
「人を愛するためよ」
父親の博
「お前、それを知るために勉強しているんだろう」
タコ社長
「それはね、苦労して苦労して従業員に給料を払うためだよ」
おばちゃん
「そうだねぇ、みんなにご飯をつくるためかねぇ」
おいちゃん
「満男、それがわかったらオレに教えてくれ」
御前さま
「あ、それは、そういう煩悩を捨てるためじゃ」


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