錆びたナイフ

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2014年10月22日
[映画]

「沓掛時次郎 遊侠一匹」 1966 加藤泰

「沓掛時次郎 遊侠一匹」


股旅もの.
東映往年の名作.
一宿一飯の義理で男を斬り、その妻おきぬ(池内淳子)に思いを寄せてしまう沓掛時次郎(中村錦之助).
低いカメラアングル.
疾風のような殺陣.
血飛沫が飛ぶ.
男女が向かい合ったシーンの長廻し.
リアルで絵画のようなセットが、すごい.

冒頭から登場する朝吉(渥美清)がいい.
ヤクザ渡世の義理と人情に憧れる朝吉に、時次郎は、ヤクザは虫ケラだ百姓に戻れという.
旅先で病んだおきぬを救うために、助っ人稼業で金を稼ぐしかない時次郎.
男を待ちながら死に際に紅をさす女と、ヤクザ出入で鬼のように人を斬る男の画像がカットバックする.
この行き場のない矛盾がヤクザ映画の原点で、話の筋はどう見ても手遅れどん詰まり.
「何が粋かよ、気がつく頃は
 みんな手おくれ、吹きざらし」
どこか場違いなフランク永井の挿入歌で、この歌詞のくだりは、台詞が被って聞きとれない.
この作品を初めて観た若い頃、おきぬが雪道で吐血するシーンや、紅をさすシーンが忘れられなかった.
加藤泰の鮮烈な赤.
夫を殺した男と暮らしてしまう女、いつか女に惚れてしまう男.
どうにもならねぇ.

ヤクザ映画は、どん詰まりをそのまま行くしかないと、腹をくくった男達に、一瞬の開放感があるだけだ.


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