錆びたナイフ

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2014年10月2日
[講義]

「インターネット 2012」 村井純

「インターネット 2012」


慶応大学・湘南藤沢キャンパス(SFC)の講義を、iTunesUで聴講できる.
これは2年前の授業で、1回80分ほどのビデオが半年分14回、かなり長いが、面白い.
講師の村井純はインターネット界の重鎮だから、次々出てくる話はどれも世界レベルで、単にインターネットの技術論ではない、現在と未来の社会の一端が見える.

会場は大きな階段教室で、ほとんどの学生は自分のノートPCを拡げてそれをのぞきこんでいる.
弁当を食べている者もいる.
レポートはネットを通して出すとか、Twitterで意見を集めるとか、ふ〜ん.
最近の大学の授業とはこんなものかと一寸びっくり.

GPSを積んだタクシーから、ワイパーを動かす情報を集めて、地域の降雨情報を生み出す、というような話がたくさん出てくる.
情報インフラとしてのインターネットと、社会にあふれるセンサーを組合わせれば、驚くべきことができる.
面白いから便利だからやろうという発想の後ろから、ビジネスがついてくる.
さらにその後ろからウィルスもスパムもバッシングもついてくるのだが、インターネットはもはや止められない.

インターネットこそグローバルだ、と村井教授は豪語している.
それ以外に「全世界的」なものなど存在しなかった.
確かに宗教も国連も全世界的ではあり得なかった.
「ネット」は、人類史上最初で(最後に?)、国も民族も人種も男女も越えたのだ.
そのしぶとさは、そもそも技術的に、開放された無責任さにある.
それは責任、つまり罪と罰の集大成である国家とは、無縁のものだ.
ネットは、誰にも追いつけないスピードで解放も抑圧さえも吹き飛ばす.
追いつけるか?オレたちに.
インターネットを支える彼らハッカーたちの、開けっぴろげな楽天主義は、新しいリベラリズムにさえ見える.


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