錆びたナイフ

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2014年4月20日
[映画]

「チャーリーとチョコレート工場」 2005 ティム・バートン

「チャーリーとチョコレート工場」


町の中にある少年チャーリー(フレディ・ハイモア)の家は、古くて傾いている.
両親と二組の祖父母、計7人で暮らしている.
祖父母は4人で一つのベッドに入っている寝たきり老人だ.
家族は貧しいが、けなげな両親と口の達者な老人たち.
しかし、家も家族もどこかシュールだ.
何しろ入口のドアが傾いている.

ウォンカ(ジョニー・デップ)のチョコレート工場に、5人の子供たちが招待される.
工場内は、テクニカラー版「オズの魔法使い」のごとき妙ちきりんな世界で、
ピクサーのアニメーション映画とディズニーランドを合体させたような具合.
ウォンカが南国から連れて来たという小人ウンパ・ルンパ(ディープ・ロイ)が働いている.
この、みんな同じ顔のオジサン小人が大勢で歌ったり踊ったりする.
お客を乗せたゴンドラが行くのはチョコレートの川.
見ていると頭が痛くなってくる・・・

招待されたチャーリー以外の子供たちはワガママでナマイキで、そのお仕置きとばかりに工場内で災難に合う.
ブラックなユーモアというより、話の展開が気まぐれで落ち着かない
ウォンカは、歯医者だった父(クリストファー・リー)の抑圧の下で育ち、「両親」という言葉にトラウマを抱えている.
で、最後にウォンカは父と和解し、チャーリーの家族とともに、アメリカ人が大好きな「家族愛」を取り戻した、のだろうか?
話の結末が思い出せない・・・

ティム・バートンの主人公は、手がハサミだった少年も、女装趣味の映画監督も、親に捨てられたペンギン悪人も、心に傷を負っていて、世の中とどう折り合いをつけて生きたらいいのか分からないまま、それがどうしたとばかりに背中をどつかれ、映画の中で宙吊りになっている.
だからどこにも大団円はないし、結末はハッピーエンドにみえない.
私は、この映画の最後に工場が壊れて、チョコレートの川が街中にあふれ出すのではないかと思った.
チョコレートはウォンカのトラウマだ.
要するに彼は、チョコレートをたくさん食べて虫歯になって、父親に叱られたかったのだ.
彼の苦悩に比べれば、風船ガムのように膨らんだり、紙のように平べったくなった子供たちの災難など、何ほどでもない.
雪の平原にポツンと建っている父の歯科医院.
人が思う社会や家族や友人は、実際はそれと違う.
その思い込みと誤解が、やっと人の生きるチカラの糧になる.
工場引きこもりのウォンカに、それを教えたのがチャーリーだった.


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