錆びたナイフ

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2014年3月27日
[映画]

「フライド・グリーン・トマト」 1991 ジョン・アヴネット

「フライド・グリーン・トマト」


冒頭、川から引き上げられる車.
何があったのかという謎解きが最後にあって、この展開は面白い.
エヴリン(キャシー・ベイツ)は夫エドと老人ホームを訪ねて、そこでニニー(ジェシカ・タンディ)と出会う.
映画はエヴリンの現代の生活を織り混ぜながら、ニニーが話す50年前の物語を描いている.

エドは帰宅するなり、妻の手料理皿を持ってテレビの前に直行、スポーツ番組に夢中だ.
エヴリンは自己啓発セミナーに通って、あの手この手の夫婦和合作戦を試みるが、うまくいかない.
で、のべつチョコバーを食べて太っている.
エヴリンはこの世を誠実に生きて、夫婦愛し合いながら暮らしたい、と思っている.
誠実に生きるとは、ガマンすること他人を責めたりしないこと、だとエヴリンは思う.

ニニーの物語は、イジーという少女と、その兄バディと、その恋人ルース(メアリー=ルイーズ・パーカー)から始まる.
バディは二人の目の前で事故死する.
心を閉ざしたイジー.
成長したイジー(メアリー・スチュアート・マスターソン)は男の子のような格好をしている.
彼女は母のために魚釣りをして、酒場で賭事をして汚い言葉を使う.
でも他の大人たちと違って、周囲の黒人やホームレスたちを気遣っている.
ルースはイジーの自由で奔放な生き方に惹かれる.
二人は小さな鉄道駅のそばにレストランを開く.
店のメニューが「フライド・グリーン・トマト」

ルースの結婚相手フランクは、妻に暴力をふるった.
フランクと別れたルースが「もう、祈って耐えるだけの人生はやめる」と言う.
半世紀前のアメリカの人種差別や男女差別の中で、イジーの奔放さが際立つ.
現代のエヴリンもまたイジーの影響を受ける.
自由に生きればいい、というのではない、自由に生きられないと思うことは何もない、と気づく.
倦怠期の夫婦と、それをなんとかしようとする妻あるいは夫の話は、喜劇でも悲劇でも、アメリカ映画でたくさん観たような気がする.
エドは凡庸で無神経だが暴力的ではないし、彼女を愛していない訳ではない.
エヴリンの不満と不安は一体何だろう.
イジーは最愛の兄の死のあと、これ以上苦しいことはないのだから、自分は自由に生きることを決意した.

エヴリンは、駐車場で割込みをした若い女の車に、自分の車をぶつける.
初めて怒ったのだ.
気持ち良かったと、彼女はニニーに言う.
彼女は家の壁をハンマーで壊してニニーの部屋を作る.
あきれるエド.
エヴリンは一緒に暮らそうとニニーを誘う.
ニニーが年老いたイジーなら、エヴリンはルースになりたいのだ.
この映画はハッピーエンドに見えるが、しかし、だいじょうぶか?
何しろ、キャシー・ベイツなのだ.


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