錆びたナイフ

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2013年2月6日
[本]

「この人を見よ」 ニーチェ

「この人を見よ」


ニーチェは仏陀を生理学者と呼び、その宗教を衛生学と呼んでいる・・!
副題は「ひとはいかにして本来のおのれになるか」
「本来のおのれ」などとというものがあると信じた西欧の思想が、
骨の髄までしみ込んだ宗教と格闘してたどり着いた極北.
検証を積み重ね世界を分析し論証している、訳ではない.
この書は強烈な自己賛美と雑駁な詩文と警句(アフォリズム)の洪水である.
とても鼻持ちならないにも関わらず、
その言葉は真っ直ぐに飛ぶ矢のように世界に突き刺さるのは、
自分が否応なく人間の頂きに到達してしまった、
とニーチェが感じているからである.
「人類がいままで真剣に考えてきたことどもは、・・それは、病的な、もっとも深い意味で害毒を流す人物たちの劣悪な本能から発した嘘なのだ・・「神」「霊魂」「徳」「罪」「彼岸」「真理」「永遠の生」などの概念のすべてがそうだ」
春のヨシキリが、ギョギョシ、ギョギョシと全身で鳴くように、はっきりと目覚めてしまった人間が、世界をみて声を上げる.
「自分自身を一個の運命のように受けとること、自分が「別のありかた」であれと望まぬこと」
「およそ存在するものであるかぎり、何一つ排除してよいものはなく、何一つ無用なものはない」
弟子も信者も「奇跡」を望むばかりで、「神の国への道」を全く理解しなかったので、イエスは怒りっぽい人だった.
ニーチェのツァラトゥストラは、初めて雲を見た子供のように、人のことなどおかまいなしに、ただ、生きよ!と叫んでいる.

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