錆びたナイフ

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2012年11月4日
[本]

「トリュフォー、ある映画的人生」 山田宏一

「トリュフォー、ある映画的人生」


映画がすべてであった少年トリュフォーが成長してゆく.
「映画のような人生、人生のような映画」
バザン、ゴダール、リヴェット、シャブロル.
山田宏一の卓抜な文章から、
当時の映画青年たちの熱気が伝わってくる.

トリュフォーの最高傑作は「隣の女」だと思う.
しかしこのヒロインのファニー・アルダンとの間に子供をもった、
というのは知らなかった.
おまけにそのヒロインの台詞は、
カトリーヌ・ドヌーブとの同棲中にドヌーブが言った言葉だとか・・
この男、アメリカのデビルズ・タワーで、
宇宙人とも同棲していたに違いない.
そこで、あの「レミドドソ」という手話を教わったのだ.

表紙の写真、F.アルダンが見上げるトリュフォーは、
この世ならぬ方を見ている・・
毎晩、映画館からスチル写真を盗む夢を見る映画監督、
「アメリカの夜」は映画を作る映画だった.
ドヌーヴの「終電車」は、話の最後が劇中劇になってしまった.
フィルムの中に自分がいるかのように、
辛うじてこの世に生きた.
世間が言うヌーベルバーグなんぞ、
知ったことではなかった.

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