錆びたナイフ

2012年10月28日
[本]

「ヤナの森の生活」 ヤナ

ハワイのジャングルの中の、
床も壁もない家とその家族と仲間たち．
こんなシンプルな生活ができたらいいなぁ、
と思う一方で、
不便で不安で2日といられない、とも思う．

飢えや寒さに対峙している訳ではない、
言わば好き好んだ先祖返りである、
こういう生活を選ぶことも、
シャカリキに金を稼いで大邸宅に住むことも可能であるなら、
今の社会は、人類の数万年に及ぶ課題を解決した、ということになる．
その最大の課題は、飢えと寒さから身を守ること、であったのだから．

国家は、国民を飢えと寒さから守り、戦争をしなければ、合格だと思う．
あとの問題はどれも余後だ．
いや、医療も介護もエネルギーも地球温暖化も、大問題というなら、
人類は前代未聞の時代に入ったのであり、
ヤナからみれば、そんな問題はとっくに解決している．
ここでは国家は消滅している．

IT技術とiPS医療で身体を拡大させる人間も、
密林の身体性にシュリンクする人間も、
人類史上でみれば死後の世界にいるようにみえる．