錆びたナイフ

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2012年7月18日
[本]

鬼海弘雄写真集 「ぺるそな」

「ぺるそな」


書店でこの写真集を開いた時は、
異形/異相の者たちに圧倒された.
みはじめると、強烈なアジア人の容貌、
モンゴル?、いやこれは日本人だ.
いや、どこにでもいるひとたちだ.
長い年月を経た相貌が、短いコメントで切り取られる.
「ゆっくりとまばたきをする男」・・・
「明け方夢を見たと話すひと」・・・
どんな人生も、些細な行為や思いの積み重ねに過ぎない.
とでも言うように、
この写真の見切りの凄さは、
人間を肯定する力に根ざしている.

この写真にあるようなひとたちがいる世界は、
はるか彼方に行き着くべき世界だと思うのだが、
それが日本の浅草だというのなら、
ああ、来てしまったのだ、という気がする.
今日の次は明日だ、明後日じゃない、
結局人間とは「ありよう」なのだ.
だからこのきらびやかな「王」たちに、
名前はない.

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